薫子様、一大事でございます!

何億年にも亘って生きてきた、尊敬すべき生物だというのに。


「希少価値!? そんなものあったもんかい! あれはこの世に必要のないものなのさ。食物連鎖にも何にも引っかからない、存在価値のないもの」

「……そう、なんですか?」

「1匹見かけたら、60匹いると思え、と言われるくらい繁殖力も生命力も強いヤツなのさ。あー、考えただけでゾッとする」


芙美さんは両腕で自分を抱えるようにして、首をぶるぶると振った。

その振動でギィギィと小さく音を立てたソファ。


「おやまぁ、このソファもそろそろ引退時じゃないのかい?」


芙美さんはかがみ込んで、動くたびにギィと鳴くソファの足を覗いた。


「まだまだ十分使えますよ。ほら、並んで座ったって、折れたりしないでしょう?」


芙美さんの隣に勢いよく腰掛けて笑って見せる。

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