薫子様、一大事でございます!

「どうしたんですか?」

「だから俺がやるって言ったんだよ」


ほら貸せと、強引に携帯を取り上げた。


あっ……。


そして、十秒足らずで、それは再び私の手へと帰ってきたのだった。


「……ありがとうございます」


なんだか情けなくて恥ずかしい。


「何なりとお申し付けくださいませ」


なんの真似か、北見さんが片膝を突いて恭しく頭を下げた。


何ですか、それは。
執事の滝山でも、膝までは突かない。


「北見さん、それをするのでしたら、こうでございます」

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