薫子様、一大事でございます!
「井上さんは?」
つり革に掴まりながら、あたりを見回す。
「隣だ」
北見さんの指差す方を見ると、隣の車両のドア付近に立つ井上さんの姿が確認できた。
ホッ……。
ひとまず息を吐く。
そこで再び、デジカメの登場。
他の乗客に気づかれないよう、北見さんは素早くシャッターを押した。
「カコちゃんがモタモタするから、見失うかと思ったよ」
「ごめんなさい」
「何があるか分からないから、Suicaも持っていた方がいいかもしれないな」
「そうですね……」