薫子様、一大事でございます!
うっかり忘れてしまうところだった。
……なんて。
こういうところも、直さなきゃいけない私の悪い癖だ。
北見さんが一緒じゃなかったら、きっと呑気に電車に揺られているところだった。
気づいたときにはアウト。
尾行は失敗。
容易すぎる想像をして、ちょっと落ち込んだ。
……って、そんなことを考えている場合じゃない。
井上さんと北見さんを追いかけなくちゃ。
乗車した駅の時同様、今度は切符の精算で北見さんをやきもきさせ、それでも何とか井上さんを見失わずに済んだのだった。
そして、井上さんは駅から歩いて10分ほどの距離にあるオープンテラスも備えたカフェへと入って行った。
……誰かと待ち合わせ?