薫子様、一大事でございます!

「……もう少し……」


……?


「もう少し?」

「……ここにいてくれ」


――えっ?


わけもなくドキリとする。


北見さんはそっぽを向いてボソッと呟いた。

いつになく弱気な態度。


怪我をしてここへ来たときだって強気だったのに……。


……どうしたんだろう。


よく分からないけれど……。


「……はい、分かりました」


私の返事を聞くと、北見さんは一瞬だけ微笑んで目を閉じた。

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