薫子様、一大事でございます!
「……うまい」
ひと言呟いた。
「よかったです」
冷めても美味しいなんて、さすがは滝山だわ。
私はまだ食べたことはないけれど、具合が悪くなるのが楽しみになる。
「具合が悪いときくらい、私に従ってくださいね?」
いつもは言われっぱなしの私。
このときとばかりに胸を張った。
そして、そのひと言が効いたのか、北見さんは私のレンゲを黙って受け入れるのだった。
「子供の頃は、こうして食べさせてもらいませんでしたか?」
北見さんの顔がほんの一瞬だけ翳る。
ただ、それはすぐに消えたけれど。