薫子様、一大事でございます!

「はい、これでおしまいです」


最後の一口を北見さんの口元へ運ぶ。


「そういえば……」


それを飲み込むと、北見さんは何かを思い出して視線を宙に投げた。


「一度だけ、こうして食べさせてもらったことがある」

「やっぱりそうですか。ないなんておかしいと思ったんです」


母親にしてもらったのだとばかり思ったら


「ばあちゃんにね」


意外な答えが返ってきた。


「母親は、もっと小さいうちに死んでるから」


衝撃的なセリフが続くとは思いもしていなくて、返す言葉に詰まる。

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