薫子様、一大事でございます!
理想の恋?
「いやぁ、すっかり暑くなったねぇ」
額に吹き出た汗を拭いながら、芙美さんが事務所へやって来た。
季節は一気に夏。
梅雨が明けた途端、見舞われた猛烈な暑さは、朝から威力全開だった。
微力ながらも事務所の中はエアコンが効いていて、芙美さんは「あぁ生き返った」と言いながらソファへ腰を下ろした。
「おんぼろエアコンでも、まだまだイケるものだねぇ」
「はい、おかげで助かっています」
これがなかったら、とてもじゃないけど夏は越せそうにない。
かといって、新たに設置するお金もない。
暑さが何よりも苦手の私には、本当にありがたかったのだった。