薫子様、一大事でございます!

「足はもう治ったんですか?」

「ほら、この通り」


履いていた麻のロングスカートを捲って、真っ白い足を晒す。

座ったまま床にトントンと足を突いて見せた。


「よかったですね」

「動けなくて適わなかったよ、まったく」


普段からフットワークの軽い芙美さんのこと。

家にじっとしているのは辛かったに違いない。



「おや? 二人はどうしたんだい?」


事務所をぐるりと見渡す。


「滝山は警備員の仕事で、北見さんは……どこでしょう」


部屋にでもいるのかな?

風邪は良くなって、すっかり元気にしているけれど。

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