薫子様、一大事でございます!
「早いところ、副業なんてしなくても済むようになるといいんだけどねぇ」
「そうですね……」
そんな日がくるのか、正直言って自信は全くない。
途中になっている星野さんの案件以外に、未だ一つも依頼はないのだから。
……はぁ。
無意識に出た溜息に、芙美さんの張り手が飛ぶ。
といっても、ごくごく軽いものだけれど。
「いやだね、薫子ちゃん、しょぼくれた顔なんかするもんじゃないよ。笑う角には福来たるって昔からよく言うだろう? 福の神様だって、辛気臭いところには来たくないってもんさ。ほら、これでも食べて元気を出していこうじゃないか」
コンビニの袋から芙美さんが取り出したのは、アイスクリームだった。
「暑いときにはこれに限るよ。溶けちまうから早いところ食べよう」