薫子様、一大事でございます!
「だろう? そう思って買ってきたのさ。みんな、この暑さでやられてるんじゃないかと思ってね」
既に食べ終わった芙美さんは、スプーンで掬った大きな塊を口へ放り投げる北見さんをニコニコしながら眺めた。
「カコちゃん、食べないのか?」
「え? あ……いえ、食べます」
気づけば、スプーンを持ったままボケッとしていた私。
急に振られて、気持ちが急く。
「なんか、顔が赤くないか?」
「そ、そうですか? ……あ、きっと、暑いせいです」
芙美さんのせいだ。
芙美さんが変なことを言い出すから、北見さんを妙に意識してしまう。
北見さんがここに入ってきてからずっと、心臓は早鐘を打ってるし、なんだかやけに顔が熱い。
そんな私を見て、芙美さんは隣でニヤニヤしているのだった。