薫子様、一大事でございます!
頭をハンマーで殴られたくらいの衝撃だった。
北見さんがここへ来て、一度も支払ったことのない給料。
私から残ってほしいと言っておいて、さすがにそれはないかもしれない。
北見さんがニヤリと笑う。
「ま、それが大半の理由だな。それと、ちょっとしたひがみだ」
「……ひがみ、ですか?」
「井上さんが90%の男じゃなかったことに対する」
「なんですか、それ」
「10%という希少価値の男をひっ捕まえて、浮気の疑いを掛けた星野さんへのちょっとした報復でもある」
「――やっぱりヒドイです!」
思わず握り拳を飛ばすと、あっさりとその手は取られてしまった。
――あっ。
「ま、めでたしめでたし、じゃないか」
もう片方の手で、ポンポンと私の手を叩く。
握ったまま放されない手。
そしてそのまま、幸せいっぱいの二人を見つめたのだった。