薫子様、一大事でございます!
偽りの恋人
「ホームページを見たのですが……」
事務所のドアを数センチほど開けて、男の人が隙間から顔を覗かせた。
ホームページという言葉に、北見さんが即座に反応する。
私と目が合った北見さんは、嬉しさを堪えるような顔をした。
そして、滝山よりも、私よりも早く立ち上がり、ドアを全開にしてその人を迎え入れたのだった。
「こちらへどうぞ」
応接セットへ案内すると、北見さんは向かい合って腰を下ろした。
私が出した麦茶を一気に流し込むと
「何でも承りますってホームページには書いてありましたが、それって本当ですか?」
早口でまくし立てる。