薫子様、一大事でございます!
「大変申し訳ありませんが、他に女性スタッフはおりません。彼女はこの事務所の代表で、」
「――代表!? あなたが!?」
「……はい、一応は……」
さっきから散々な言われよう。
ただ、それも最もな意見に思えなくもなくて、答えながら小さく縮こまる。
早川さんは「へぇ」と言いながら、私を上から下まで眺めた。
「二階堂薫子と申します」
形ばかりの名刺を差し出した。
「二階堂でご理解いただけないのであれば、こちらと致しましてはお断りいただいても――」
「いえっ、この際細かいことは言っていられませんから、彼女でいいです」
……“でいいです”なんて、なんだかショック。
チクチクと地味な痛みが胸を刺した。