薫子様、一大事でございます!

……ですよね。

えっと……


「……慎吾くん」


男の人を呼び捨てしたことのない私には、この程度でも相当ハードルが高い。


ボソボソと言った私に、早川さんは「え? 聞こえないよ?」と笑う。


もう一回と人差し指を立てて指示されて……。


えーい、こうなったら!


「慎吾くん!」


意を決して発した声は、予想以上に大きかった。

周りのテーブルの人たちが、何事かとこちらを見る。


「でかいって」


早川さんが「シー!」と自分の口元に人差し指を当てた。

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