薫子様、一大事でございます!
趣味のバイクにまたがると、とても還暦を過ぎたおじさまには見えない。
「どなたかお客様でも?」
テーブルに2つ並んだカップを見て、「もしや依頼ですか?」と滝山が嬉しそうに目を輝かせた。
「そうなの。これ」
さっきプリントアウトしたばかりの資料を渡すと、今度は大きなため息を吐く。
「……また猫ですか」
「写真はこれなの」
「いったい、いつになったらまともな依頼がくるのやら」
やれやれといった感じに肩を落とした。
まともな依頼といったって、それ以前に、今回のような猫ですらこなせていないのだから、やることを出来るようになってから口にするセリフかもしれない。