薫子様、一大事でございます!
第4章
芙美さんの依頼
「薫子様! 一大事でございます!」
北見さんご所望のコーヒーを買いに出た帰りのことだった。
事務所の前にまで出て私に大きく手を振っているのは、セリフを聞けば分かる通り滝山だった。
「どうかしたの?」
「それがですね、あのですね、」
興奮しすぎて言葉が出ないらしい。
アップアップとエサを求めて喘ぐ鯉のようだった。
「落ち着いてよ、滝山」
「これが落ち着いてなどいられますか」
とにかく事務所へ、と私から手荷物を奪い取り、私の背中を押したのだった。
事務所のドアを開けると、そこには北見さんだけでなく芙美さんまで顔を揃えていた。