薫子様、一大事でございます!

病院へ行かなくても本当に大丈夫?


不安げに見つめる私に、いつの間に回復したのか、滝山がタオルを冷やして持って来た。


「これでその血を拭ってあげてください」

「……わ、わかったわ」


タオルを持った手を怖々近づける。

それを唇にそっと当てると、男の人の顔が苦しそうに歪んだ。



――ひゃっ!



慌ててタオルを引き離す私の隣で、滝山はその足や腕をしきりに調べていた。



「腫れているところはありませんから、骨が折れたりはしていないようですね」


……よかった。

< 32 / 531 >

この作品をシェア

pagetop