薫子様、一大事でございます!
「さてと、どうしたものでしょうか。バスはしばらくなさそうですし……」
バスの時刻表を見ると、2時間に1本という本数だった。
次のバスが来るまで、あと1時間半はある。
「タクシーにしましょ」
1台だけ停車していたタクシーの車内を覗き込むと、運転手は椅子を倒して寝入っていた。
――コンコンッ
滝山が窓をノックすると、運転手は条件反射のように飛び起きて、すぐに後部座席のドアが開けられた。
「すみませんが、この住所までお願いできますか?」
滝山がメモを渡すと、運転手は「はいはい、ここですね。少し時間がかかりますがね」と少し訛りのある口調で答えた。
駅から少し離れているらしい。