薫子様、一大事でございます!

「……参りましょうか、薫子様」


滝山に促されて、敷地内へと足を踏み入れる。


砂地の庭を横切り、玄関で立ち止まった。

インターフォンらしきものは、どこにも見当たらない。


滝山が「ごめんくださいませ」と声を上げる。

けれど、中からの応答はなかった。


「お留守でしょうか」


首を傾げながら戸に手を掛けると、カラカラと音を立てて玄関が開いた。

鍵が掛かっていない。


「ごめんくださいませ」


滝山がもう一度声を掛けてみたけれど、反応はさっきと同じ。


どこかしら、それにホッとする自分もいた。

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