薫子様、一大事でございます!

敷地内の垣根を抜けると、そこには一面畑が広がっていた。


「あっ……」


滝山が前方で声を上げる。


「いらっしゃいましたよ、薫子様」


滝山が嬉しそうに振り返った。


その言葉に身体が強張る。


「旦那さまー! 奥さまー!」


大きな声と一緒に、半円を描くように両手を振る。


二人は私たちから数十メートルの距離で作業をしていた。


滝山の声に頭を上げた二人が、スッと立ち上がる。


「……滝山!? ――薫子!?」


お母様が素っ頓狂な声を発した。

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