薫子様、一大事でございます!
顔を上げられないままの私の元へ走り寄る気配に、更に身体が硬くなる。
「薫子!」
お母様の腕が私の身体を包み込んだ。
「……よかった、無事だったのね」
髪を優しく撫でられて、緊張が解けていく。
「……ごめんなさい、お母様」
「どうしてあなたが謝るの。悪いのは、お父さんとお母さんなのに」
私を引き剥がしたお母様が、俯いたままの顔を覗き込む。
つばの広い帽子に農作業姿。
いつも綺麗な格好をしていたお母様から土の匂いがするなんて。
「でも、私が逃げ出したりなんかしたからこんなことに……」