薫子様、一大事でございます!

芙美さんが言っていたことを思い出した。


“後悔しているのは親御さんの方だよ”


私たちはお互いに“たられば”で苦しんできたんだ。


もしも結婚していれば。
もしも無理強いしなければ。

そうやって、自分のしてきたことを悔いて時間を過ごしてきたんだ。


そのとき、ふと聞こえた嗚咽。


「うっ……うっく……」


それは滝山から漏れたものだったらしい。


「……ようございました。本当に……っ」


ハンカチで目頭を覆う。


「滝山が連れてきてくれたのね?」


お母様の言葉に頷く。

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