薫子様、一大事でございます!

「でも、よくここが分かったな。父さんたちだって、薫子のことは必死で探したけど見つけられなったというのに」


……探してくれたんだ。

家出した愚かな娘なのに。


「とにかく、中へ入ろう」

「でも、畑は?」

「急ぐことでもない」


信じられなかった。

お父様がそんなことを言うなんて。

今まで、どんなことがあっても仕事が最優先だったのに。


私の誕生日にも運動会にも、いてくれた記憶なんて一つもない。

それが今、私を優先してくれようというのだから。


「どうした?」

「あ、ううん」


お父様に聞かれて言葉を濁す。


「さ、薫子、入りましょう。滝山も」

「はっ!」


私たちの後ろには滝山が続いた。



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