薫子様、一大事でございます!
今日は、ゴキブリといい、この男の人といい、初めてづくしの一日だ。
ここへ来てからはそういうことばかりだったけれど、“初めて”という経験が少なくなってきたこの頃の私にとっては、ちょっと喜ばしいことだった。
猫の捜索という肝心の仕事は、この衝撃的な事件が原因ですっかり忘れてしまっていた。
「あとは目を覚ましてくれさえすればいいのですが……」
「……そうね」
早く目を開けてくれないかしら。
何をするわけでもなくぼんやりとしているうちに、自然と瞼が重くなっていく。
男の人が寝ているソファと向かい合っている一人掛け用ソファに深く腰を掛けると、いつの間にか深い眠りへと落ちて行った。