薫子様、一大事でございます!

「全部裏の畑で?」


私の質問に、お母様は口元に手を当ててふふふと笑った。


……何かしら?


目を瞬かせてお母様を見つめていると


「いや、実はまだ収穫はできてないんだよ。何せ、ド素人だからね。それは全部ご近所さんから分けていただいたものだ」


お父様が代わりに答えた。


それもそうよね。
ここへ来て、まだ1年も経っていないのだから。


でも、ご近所さんが優しい人たちでよかった。

電車を降りたときには、こんな田舎でどんな暮らしをしているのかと不安に思ったけれど。


「しかし奥様も旦那様も、お元気そうで……。滝山は嬉しゅうございます」

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