薫子様、一大事でございます!

「あらあら、滝山ったら」


また泣き出した滝山をお母様が宥める。


「さぁ、食べようじゃないか」


滝山のグラスにお父様がビールを注ごうとすると


「いえいえいえ、旦那様、私が!」


滝山がお父様からビールを奪い取ろうと手を伸ばす。

けれど、それは空振りに終わるばかりで。


「いいから、グラスを出しなさい。こんな遠くまで来てくれたんだ。薫子の面倒だってみてもらって。滝山には本当に感謝してるぞ」

「……もったいないお言葉でございます」


またまた泣きそうな滝山に、先回りしてティッシュペーパーを差し出した。


「滝山ったら相変わらず感激屋さんね」


お母様の言葉に笑って頷いた。

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