薫子様、一大事でございます!
二人きりの夜
「それじゃ、行くね」
お父様たちを訪ねて来てから早5日。
長居をする予定はなかったのだけれど。
一緒に畑仕事をやったりしているうちに、気づけば日数が経っていたのだった。
「薫子様、本当に申し訳ございません」
「いいのよ、大丈夫」
平身低頭謝る滝山の肩に手を置いて、顔を上げさせる。
ここへ残ることを決めた滝山は、目に涙をいっぱい溜めていた。
長年仕えていたお父様のそばは、滝山にとってみれば大切な居場所。
ここへ来てからの滝山の幸せそうな顔を見ていたら、連れて帰るのは心苦しくて。
残りたいという希望は滝山からは言えないだろうと、私からの提案だった。
最初こそ反対していた滝山本人も、最後には素直に応じてくれたのだった。
「お父様、お母様、滝山をまたよろしくお願いします」
「もちろんだよ」
二人とも大きく頷く。
「滝山、お父様とお母様をよろしくね」
「はっ! 身を呈してお仕えいたします」
滝山は最敬礼で答えてくれた。