薫子様、一大事でございます!
滝山は、どうやって北見さんと連絡を取ったんだろう。
という疑問は、お父様たちの自宅の電話から事務所へ掛けたんだろうという、簡単すぎる答えに行き着いた。
誰もいないホームのベンチにひとまず腰を下ろす。
来てくれる手筈になっている以上、ここから動くわけにはいかない。
真面目な北見さんのこと。
来ないはずがない。
そう思いながら待てど暮らせど、一向に現れない北見さん。
1時間に1本という電車をもう何本見送っただろう。
駅に着いたときに早鐘を打っていた私の心臓は、すっかり沈静化されておとなしくなっていた。
それどころか、どんどん心細くなってくる。
北見さんなら、お父様の家は知っている。
いっそのこと、もう一度家に戻ろうか。