薫子様、一大事でございます!

そう考え始めたとき、ホームに下りの電車が入ってきた。


きっと、この電車にも乗っていないんだろうな。


そう思いながら荷物を手にして立ち上がりかけたときだった。


視界の隅に、見覚えのある姿が映り込んで――……


そっちへと視線を投げかける。


「ごめん、遅くなったな」

「――北見さん!」


待ちに待った登場だった。


「来てくれないのかと思いました」


全身の力がフッと抜ける。

座っていたベンチにドサっと座り込んだ。


「ごめん。出掛けに芙美さんが来てさ」

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