薫子様、一大事でございます!

「芙美さんが?」

「依頼人を連れて来たんだ」

「――依頼人!?」


北見さんが頷く。


「それで、ちょっとだけ話を聞いていたら、こんな時間にね。というか、電車の本数があまりに少なくて、乗り継ぎがスムーズにいかなかったんだ」

「……そうだったんですね」


何時間も待たされたものだから、見捨てられたのかもしれないとまで思ってしまった。


北見さんには迷惑ばかり掛けてきたから、それもあるかも、なんて。


でも……よかった。
ちゃんと来てもらえて。


「遅れるって連絡しようとしたって、カコちゃんの携帯は全然繋がらないし」

「……あっ。すみません、電池切れで……」


北見さんが「やっぱりね」と呆れて呟く。

< 348 / 531 >

この作品をシェア

pagetop