薫子様、一大事でございます!
「芙美さんが?」
「依頼人を連れて来たんだ」
「――依頼人!?」
北見さんが頷く。
「それで、ちょっとだけ話を聞いていたら、こんな時間にね。というか、電車の本数があまりに少なくて、乗り継ぎがスムーズにいかなかったんだ」
「……そうだったんですね」
何時間も待たされたものだから、見捨てられたのかもしれないとまで思ってしまった。
北見さんには迷惑ばかり掛けてきたから、それもあるかも、なんて。
でも……よかった。
ちゃんと来てもらえて。
「遅れるって連絡しようとしたって、カコちゃんの携帯は全然繋がらないし」
「……あっ。すみません、電池切れで……」
北見さんが「やっぱりね」と呆れて呟く。