薫子様、一大事でございます!

視線が重なったことで、鎮まっていた鼓動が再加速を始めた。


それを悟られたくなくて


「ちゃ、ちゃんと帰りますよ。だって、モモとクロが心配ですから」


茶化して答える。


「モモとクロが、ね」


ふーんと北見さんが頷く。


「……寂しかったですか?」


恐る恐る、でも冗談めかして聞いてみる。


「まあね」


北見さんから肯定の言葉が返ってくるとは予想もしていなくて。


「えっ……」


言葉に窮してしまった。

< 350 / 531 >

この作品をシェア

pagetop