薫子様、一大事でございます!

笑顔笑顔。

ニッと歯を見せると


「変な顔」


北見さんにまたからかわれた。


……おかしいな。
どうして素直に傷ついたって言えないんだろう。

私は北見さんに会いたかったって。


少し前まで、思ったことは何だって言えたはずなのに。


いつからか、北見さんの言動に翻弄されて。

どうしたらいいのかなんて、この私に分かるはずもなかった。



「じゃ、帰るとするか」

「……はい」

「次の上りの電車は……」


北見さんがホームにある時刻表を指で追いながらチェックする。


「よし、ナイスタイミングだ」


あと5分も待てば、上り電車は来るらしい。


また何時間も待たされるのかもという不安は消えたのだった。

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