薫子様、一大事でございます!
「……これはいけない。すっかり忘れておりました」
男の人のそばに揃って近づき、軽く肩をトントンとしてみる。
「あの……」
私の声に、瞼が僅かに反応する。
「朝ですよ、起きてください」
「薫子様、その声掛けは多少おかしいようにも……」
「そうかしら? それじゃ何て言ったらいいの?」
「そうですねぇ、お加減は? も変ですし……。どなたですか? っていうのはどうでしょうか」
「だって、起きてもいないのに問い掛けるのもどうかと思うわ」
「ふむ、確かにそうでございますねぇ」
そんなやり取りをしていると、ふと横から視線が向けられていることに気付いた。
「ここは……?」