薫子様、一大事でございます!
第5章
次なる依頼は水商売⁉︎
事務所へ帰った私たちを歓迎してくれたのは、モモとクロだった。
正確には、北見さん“だけ”への歓迎と言えるかもしれない。
たった1週間で私のことは忘れてしまったのか、二匹揃って北見さんにおねだりするように擦り寄るばかりで、私には見向きもしないのだから。
ちょっとしたジェラシーを感じてしまう。
――そうだ。
「北見さん、この前話してた、芙美さんの知人の依頼って?」
「え? ……あぁ、あれか」
私は聞くのを忘れていたけれど、北見さんも言うのをすっかり忘れていたらしい。
一瞬の間の後、思い出したようだった。
「矢神麻紀って女性を知っているか?」
「……やがみ……まきさん、ですか?