薫子様、一大事でございます!
「昨日帰ってくるものだとばかり思ってたんだけど」
「いろいろとありまして……」
「二人で泊まってきたのかい?」
深い意味はない質問なのかもしれないけれど、私も北見さんも答えられずに言葉に詰まってしまった。
そんな私たちを見て、芙美さんが穏やかな笑みを浮かべる。
「おやおや。仲が良くて何よりだよ」
「ち、違うんです」
不可抗力というか……。
「あのですね、」
「麻紀ちゃん、入っといで」
私の弁解を聞くつもりはないらしい。
というよりも、聞こえなかったらしい。
芙美さんは、ドアの向こうに声を投げかけた。