薫子様、一大事でございます!
「滝山、お茶でも――」
振り向きながら言いかけて、ハッとした。
そうだ。
滝山はいないんだ。
「滝山さんはどこかにお出掛けかい?」
「あ、いえ……。滝山は、父と母の元に残ることになったんです」
芙美さんは目を丸くして
「おやまぁ、そうかい……」
どこか少し寂しそうだった。
「それで、薫子ちゃんはご両親にちゃんと会えたんだね?」
「はい。芙美さんのおかげです」
「いやだねぇ、私はなんにも。とにかくよかったよかった」
芙美さんは満足そうに頷くのだった。