薫子様、一大事でございます!
「準備できたのか?」
私たちの声が聞こえたのか、北見さんと芙美さんが事務所から顔を覗かせた。
「って、カコちゃん?」
私の姿を見て、北見さんが絶句する。
恥ずかしくて俯いた。
「どう? 別人でしょう?」
壁に寄りかかったままの私の腕を取って、麻紀さんが芙美さんと北見さんの前へと突き出す。
高いヒールによろけると、北見さんが手を貸してくれた。
「……すみません」
謝る私の耳元に
「俺は普段の方がいいと思うけどね」
芙美さんと麻紀さんには聞こえないくらいの声で囁く。