薫子様、一大事でございます!
「ちょっとちょっと、あんまり不自然な行動はしないで」
そんなに挙動不審だった?
私の袖を引っ張り、麻紀さんが軽く釘を刺す。
麻紀さんにも悟られないよう、ごくごく自然にしていたつもりなんだけど……。
「ごめんなさい」
「店に入っても、変な行動は謹んでね」
「……はい」
「あ、それから、店長には新人を連れて行くって話してあるから」
なんて手回しの早い。
麻紀さんによると、店には登録しているだけで20人のホステスがいるらしく、常時15人は出勤しているらしい。
普通がどのくらいなのか分からないけれど、多分、規模の大きなお店の部類に入るんだろうと想像はできた。
「本当に私にホステスのフリなんて出来るでしょうか」
不安がつい口をついて出る。
「こういう依頼は今までなかった?」
「そうですね。恋人のフリならありましたけど」
「そっちの方がよっぽど難しいじゃない。新人ってことなんだし、不慣れで全然問題ないわ」
麻紀さんの言葉にホッとしたのだった。