薫子様、一大事でございます!
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「麻紀ちゃん、3番にご指名だよ」
ウエイターが麻紀さんにコソッと耳打ちした声が漏れ聞こえた。
「荒野社長、ちょっと待っててね」
「また戻ってきてくれるんだろうね?」
「もちろんよ」
軽くボディタッチで答えると、麻紀さんは私に「行きましょ」と告げた。
立ち上がって初めて、店内のテーブルがほぼお客で埋め尽くされていることに気づいた。
こんなご時世でも、こういうお店に来る人はたくさんいるらしい。
たくさんのホステスを抱えて、高級を売りにしていそうだけれど、充分やっていけているように見えた。
「お待たせいたしました」
頭を下げた麻紀さんの後ろで私も頭を下げる。