薫子様、一大事でございます!
さすがに名前で気づかれるかもしれない。
自分でも経験したことのない速さで刻む鼓動。
「薫子です」
「薫子ちゃんか。常盤と申します」
え……。
麻紀さんの口から私の名前を聞いても、眉一つ動かさない。
全く気づいていないの……?
「……宜しくお願いします」
恐る恐る隣へ腰を下ろした。
それでもDCHの様子は変わらず。
幸いなことに、私が二階堂薫子だと本当に分かっていないらしい。
気づかれていないことが分かって、鼓動が急速に落ち着いていく。