薫子様、一大事でございます!
「そんなんじゃ困るわ。薫子さん一人じゃ護衛なんて無理だもの」
「……ですよね。ごめんなさい」
「まぁ、急用だって言うんなら仕方ないけど」
タクシーを降りて、そんなことを話しながらマンションへと入って行ったときだった。
私の携帯が着信を知らせてブブブと震えたのだ。
画面を開いてみると、それは北見さんからのもので。
「どうかしたんですか?」
すぐに応答すると
「店の方は?」
ちょっと呑気だと思える質問をしてよこす。
「もう終わって、今タクシーを降りたところです」
「部屋に帰る前に事務所へ寄ってくれ」
「何かあったんで――」