薫子様、一大事でございます!

「つ、付け狙うだなんて! そんなんじゃありませんから!」


男性が声を荒げる。

北見さんが麻紀さんを見てギョッとしたのは、そういう訳だったからだ。


麻紀さんは口元に手を当て、恐ろしいものでも見るようにその男性を見つめた。


「麻紀さん、部屋へ戻られていた方が」

「……いえ、私も話を聞きたいわ」


北見さんの提案を麻紀さんが断る。


そして、私同様に男性の前へ回り込むと、大きく深呼吸をして向かいのソファに腰を下ろしたのだった。


「誰なの、あなた」


鋭く刺すような口調で問いただす。


これには男性も驚いたようで、肩をビクンとさせて上半身を後ろへ仰け反らせた。

< 419 / 531 >

この作品をシェア

pagetop