薫子様、一大事でございます!
……確かに。
行動を逐一見られていたなんてゾッとしてしまうのも無理はない。
「すみません! 本当に申し訳ありませんでした!」
突然立ち上がったかと思ったら、吉池さんは頭を深く下げた。
「自分から声を掛ける勇気がなかなか持てなくて。僕、自分に自信もないですし……」
こっそり花をプレゼントすることで、自分の存在を知ってほしかったということらしい。
吉池さんは、麻紀さんが止めるまで何度も何度も謝ったのだった。
困らせるつもりも、怖がらせるつもりも、全くなかった。
「もう二度とこんなことはしません! あなたに嫌われるのだけはイヤですから。顔を出すな、近寄るなというのであれば引っ越します」
最初に見せた印象とは違って、毅然とした態度だった。