薫子様、一大事でございます!

私とはレベルが違う。

分かってはいるけれど。

至極当然のことだけれど。


キリキリと胸が痛む。


「ほらほら、北見さん、薫子ちゃんをいじめないでおくれ」

「私は別にいじめられてなんて」


芙美さんには、すっかり気持ちを見透かされてしまっている。

否定すればするほど、自分が惨めに思えた。


「あ、そうだ。北見さんに手伝ってほしいことがあって来たんだよ」


芙美さんが思い出したようにパチンと手の平を叩く。


「何でしょうか」

「玄関の電気の球が切れちまってね」

「交換ですね」

「そうなんだよ。悪いんだけど、やってもらっていいかい?」

「もちろんですよ」


早速行きましょうと、二人は揃って事務所を後にしたのだった。

< 438 / 531 >

この作品をシェア

pagetop