薫子様、一大事でございます!
私とはレベルが違う。
分かってはいるけれど。
至極当然のことだけれど。
キリキリと胸が痛む。
「ほらほら、北見さん、薫子ちゃんをいじめないでおくれ」
「私は別にいじめられてなんて」
芙美さんには、すっかり気持ちを見透かされてしまっている。
否定すればするほど、自分が惨めに思えた。
「あ、そうだ。北見さんに手伝ってほしいことがあって来たんだよ」
芙美さんが思い出したようにパチンと手の平を叩く。
「何でしょうか」
「玄関の電気の球が切れちまってね」
「交換ですね」
「そうなんだよ。悪いんだけど、やってもらっていいかい?」
「もちろんですよ」
早速行きましょうと、二人は揃って事務所を後にしたのだった。