薫子様、一大事でございます!
……どうしてだろう?
「私の他には誰もいませんが」
一人だから、誰かに聞かれて困るようなことはないことをアピール。
けれど、男性はそれでも中に入るのを拒絶した。
「一緒に行っていただきたいところがあるんです」
――あぁ、そういうことだったのね。
他に聞かれて困るということじゃなかったんだ。
依頼したいことと、その場所に何かの関係があるらしい。
「分かりました」
バッグを取って事務所を出る。
……鍵はどうしよう。
北見さんが持って出ていなかったら困るだろうし……。
このまま施錠しないで行こう。