薫子様、一大事でございます!
下まで降りると、停車していた黒塗りの高級車からさっきの男性が降り立ち、後部座席のドアが開けられた。
「どうぞお乗り下さい」
言われるままに車に乗り込む。
――と、そこで。
「どうして――!?」
運転席の後ろに座っていた人を見て、身体が凍りついた。
「お久しぶりですね、薫子さん。あ、久しぶりでもないかな。一昨日の夜にもお会いしましたから」
DCHだったのだ――……。
降りようとドアを開けようにも、鍵をロックされていて叶わず。
窓を開けて助けを呼ぼうにも、窓にもロックが掛かっているのだった。