薫子様、一大事でございます!
口調は穏やかなのに、目があまりにも冷ややかで。
反発することすらできない。
わなわなと震える手を握り締めた。
「それじゃまた。僕はこれから仕事へ行きますので。何かあったら、そこに置いてある携帯で連絡をください」
ベッドサイドの飾り棚を指差した。
見ると、そこには1台の携帯。
――あ。
「私のバッグは!?」
ここへ来るときは確かに持っていたはず。
でも、それが見当たらないのだ。
「それなら預からせていただていますよ。携帯で別のところに連絡を取られたら困りますから」
更なる追い討ちが私に襲い掛かる。