薫子様、一大事でございます!

それに比べて、この家の現状は何て寂しいんだろう。

シンと静まり返って、まるで息をしていない。


「こちらでございます」


珠美さんが立ち止まったのは、お父様が書斎として使っていた部屋だった。


ここまでDCHに乗っ取られただなんて……。


悔しさにギュッと手を握る。


ノックをすると、即座に中から「どうぞ」と声がした。


ドアが開けられ、中へ招き入れられる。


「待っていましたよ」


背中にそっと手を添えられ、思わず顔を歪めた。


「来るとは思っていましたが、もしも来なければ、僕の方から薫子さんに会いに行こうと思っていました。寂しかったですか?」

< 454 / 531 >

この作品をシェア

pagetop