薫子様、一大事でございます!
それに比べて、この家の現状は何て寂しいんだろう。
シンと静まり返って、まるで息をしていない。
「こちらでございます」
珠美さんが立ち止まったのは、お父様が書斎として使っていた部屋だった。
ここまでDCHに乗っ取られただなんて……。
悔しさにギュッと手を握る。
ノックをすると、即座に中から「どうぞ」と声がした。
ドアが開けられ、中へ招き入れられる。
「待っていましたよ」
背中にそっと手を添えられ、思わず顔を歪めた。
「来るとは思っていましたが、もしも来なければ、僕の方から薫子さんに会いに行こうと思っていました。寂しかったですか?」