薫子様、一大事でございます!
「涼夜のことだね?」
頷く。
「その前に、再会を祝して乾杯でもしようじゃないか」
「お酒なんて飲みたくありません」
「そう言わずに。ちょっと付き合ってくださいよ」
パンパンとDCHが手を叩くと、ドアが開いて、昼間私を車に乗せた黒尽くめの男の人が現れた。
トレーにはワインとグラスが2つ。
既に指示してあったらしい。
黒尽くめの男はそれらをテーブルに置くと、一礼して再び部屋を出た。
グラスに注がれた真っ赤なワイン。
それを愛しそうに眺めながらクルクルとグラスを回す。
そんな顔すら見たくもなくて、目をそむけた。